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「ブラック フリース」はメンズのスーツで約40万円、ジャケットが約30万円と大変高額です。こうなるともうデザインうんぬんではなく、そのプライシングにふさわしい価値かどうかが問われるわけです。ですから、いかにしてお客様に惚れ込んでもらうかが接客のポイントとなります。
僕がいちばんに心がけているのは、空気のつかみ方。それには、瞬間的な集中力が必要です。お客様が商品を手にしたときの緊張感。その緊張がふわっとほどけそうになる一瞬に、お客様とのコミュニケーションが生まれるかどうかが懸かっています。そういう点でも、ある意味ファミリー的な触れ合いが求められるブルックス ブラザーズの接客の仕方とはかなり違います。
ホテルにせよ、洋服屋にせよ、そこが一流の店であっても日本では接客業の仕事はまだまだ高く評価されてはいません。けれど、以前、青山本店でメンズのマネージャーを担当していた時、ある著名なエディターをインタビューさせていただく機会があり、こう言っていただいたことがあります。「ブルックス ブラザーズの青山本店で働くということは素晴らしいこと。誇りを持ってください」。その言葉は僕の胸の中で、今でも最高の輝きを放っています。
今、ブラック フリースの顧客の方に、何かのパーティがあれば必ず招待してくださる方がいらっしゃいます。メンバーリストにはそうそうたる方々のお名前があって恐縮しますが、プロの販売員として認められたというよりも、お客様と人間的な部分で繋がりができたことを、何より嬉しく思います。