
かつてヨーロッパの地中海地方には、“ゴールデンフリース(黄金の羊)”と讃えられた高品質な羊毛がありました。スペインでは王室のみに使用が許されていたその品種は、1765年に時の王カルロス三世によってサクソニー卿に与えられ、サクソニー地方で大切に育てられることになります。そして1820年にオーストラリアのタスマニア島へと伝えられ、交種改良を経ていない現存する最後の純血種として、オーストラリアとニュージーランドのウールカンパニー数社が今日までその血統を守り続けてきました。この希少なウールこそ、現在ブルックス ブラザーズが一部のウール製品に使用しているサクソンウールです。
立体的なコイル形状が特徴のサクソンウールは、弾力性と伸縮性に富み、非常に軽く柔らかいという特性を備えています。しかしサクソン種の羊は品種が希少な上に、ファインメリノとして知られるメリノ種の羊に比べて体格が3/4ほどしかなく、羊毛の産出量も少ないのです。
限られた量の原毛のなかで、ブルックス ブラザーズはカシミアにも匹敵する18.5ミクロンという極細で最高ランクの羊毛を厳選し、イタリアの高い技術を備えた紡績工場で糸に紡いでいます。それは最高峰のウール製品をお届けするのみならず、広く知っていただくことによって希少な種を次世代へと伝えるためでもあるのです。
伝統を守っていくには、なによりもその素晴らしさを伝えることが最良の方法。服飾史上に残る数々の傑作を生み出し、それらを今日まで伝えてきたブルックス ブラザーズはそう考えています。悠久の時を経て今日まで守られてきたサクソンウールを守り、未来へ伝えることは、ブルックス ブラザーズの使命でもあるのです。サクソンウールのかつての呼称“ゴールデンフリース”は、奇しくもブルックス ブラザーズが伝統的に掲げるシンボルマークの名称と同じ。それはギリシア神話の金羊伝説に端を発し、15世紀フランスの騎士団の紋章や英国毛織物業界の象徴ともなっていたマークです。現代にも残る黄金の羊の伝説とやさしい温もりは、きっと子供たちの世代にも大切に伝えられていくことでしょう。
ブルックス ブラザーズでは、このような長い歴史を辿ってきたサクソンウールの原毛で紡がれた糸を使用し、スーツやジャケット、セーターに仕上げて提供しています。目印は”SAXXON”のタグ。ぜひ店頭でその風合いをお確かめ下さい。